Znaniecki (1936) Social Actions の第V章で、著者ズナニエッキは、かれの社会的行為の用語法にしたがいつつ、マリノフスキー、モース等の先行研究から事例を収集して、「招待と誘惑」の形式分析を行っています。かれによれば、「招待と誘惑」は、行為者の側で、社会的対象(行為者が働きかけて影響力を行使しようとする—ここに著者はその社会性を見ています—他の行為者)への肯定的偏見(positive prejudice)に基づいて行なわれるものです。行為が、中立的ないし、無前提にではなく、行為者の目的に関連する、社会的対象の行動複合のもつ性向(傾向性)についての、特定的または一般的に肯定的または否定的な想定(=偏見)に基礎を置き、またそこから出発して、遂行されるとき、肯定的ないし否定的偏見にもとづく行為と言われます。なお、このような偏見は、幼児期において、行為の型として、身につけられると著者は考えています(第IV章)。
一般的に言うとズナニエツキの行為分析は、この想定にもとづいて、またその確信の度合いや検証方法に関連して、行為において動員されるさまざな手段や方法がどのようなものになるかを、経験的資料にもとづいて、比較的体系的に整理するというものです。
本章の分析からは、歴史的社会や人類学的対象の中だけでなく、現代社会においても、どれほど「招待と誘惑」という行為が行なわれているか、また、(より重要な問いですが)それはいかなる条件によって促進・阻害・変型されたりするのかに気づくことができるでしょう。その結果、私たちが、さまざまな物質的な贈物やサービスのみならず、象徴的に、挨拶を「交換」したり、微笑みを「かわす」ときに、それが「招待と誘惑」としての分析可能性をもっていることに気づくためのもう一つの理論的視点を得ることができるでしょう。
Znanieck (1936) での、社会的行為の分析は、かれの最終的な体系的社会学(Znaniecki (1965) Social Relations and Social Roles: The Unfinished Systematic Sociology.=右写真)での社会的関係の分析に対応しています。この本では、基礎的社会関係の中から4つの関係(母子関係、兄弟関係、婚姻および性的関係、礼譲的友誼関係)が選択されて分析され、方法論的には、2人のパートナーにより、相互交渉に際して、かれらが一定の文化的基準と規範に従うことを条件として、遂行される行為の限定的システムとして、それぞれの関係を分離して探求する(=個々人の心理学的分析に訴えることなく、社会学的に有意義な一般化を行なう)ことができることが証明されるとしています("[W]e found that it is possible to investigate each relation separately as a limited system of actions performed by the two partners, when dealing with each other, provided they follow certain cultural standards and norms." Znaniecki (1965) p. 188.)。
一般的に言うとズナニエツキの行為分析は、この想定にもとづいて、またその確信の度合いや検証方法に関連して、行為において動員されるさまざな手段や方法がどのようなものになるかを、経験的資料にもとづいて、比較的体系的に整理するというものです。
本章の分析からは、歴史的社会や人類学的対象の中だけでなく、現代社会においても、どれほど「招待と誘惑」という行為が行なわれているか、また、(より重要な問いですが)それはいかなる条件によって促進・阻害・変型されたりするのかに気づくことができるでしょう。その結果、私たちが、さまざまな物質的な贈物やサービスのみならず、象徴的に、挨拶を「交換」したり、微笑みを「かわす」ときに、それが「招待と誘惑」としての分析可能性をもっていることに気づくためのもう一つの理論的視点を得ることができるでしょう。
Znanieck (1936) での、社会的行為の分析は、かれの最終的な体系的社会学(Znaniecki (1965) Social Relations and Social Roles: The Unfinished Systematic Sociology.=右写真)での社会的関係の分析に対応しています。この本では、基礎的社会関係の中から4つの関係(母子関係、兄弟関係、婚姻および性的関係、礼譲的友誼関係)が選択されて分析され、方法論的には、2人のパートナーにより、相互交渉に際して、かれらが一定の文化的基準と規範に従うことを条件として、遂行される行為の限定的システムとして、それぞれの関係を分離して探求する(=個々人の心理学的分析に訴えることなく、社会学的に有意義な一般化を行なう)ことができることが証明されるとしています("[W]e found that it is possible to investigate each relation separately as a limited system of actions performed by the two partners, when dealing with each other, provided they follow certain cultural standards and norms." Znaniecki (1965) p. 188.)。